ゼロトラスト

ゼロトラストとは

ゼロトラスト(Zero Trust)は、決して信頼せず、常に検証するを原則とするセキュリティの設計思想です。特定の製品名ではなく、考え方・アーキテクチャの名前です。

従来の考え方は「境界防御」と呼ばれ、社内ネットワークの内側は安全、外側は危険という前提に立っていました。しかしクラウド利用やリモートワークが広がり、「社内」という境界そのものが曖昧になりました。

ゼロトラストでは、社内・社外という場所を信頼の根拠にしません。アクセスのたびに、誰が・どの端末で・何にアクセスしようとしているかを検証します。

境界防御との比較

境界防御モデルゼロトラストモデル
信頼の根拠ネットワークの内側にいること認証・端末の状態・文脈
検証のタイミング入口で1回アクセスのたびに毎回
侵入されたら内部を自由に横移動されやすい移動のたびに検証で止められる
前提社内は安全侵害はすでに起きているかもしれない

境界防御が弱いのは、いったん内部に入られたときです。攻撃者が社内を自由に動き回る「横移動」を許してしまいます。ゼロトラストはこの被害の広がりを抑えることを重視します。

5つの構成要素

ゼロトラストは複数の仕組みの組み合わせで実現します。

  • 強い本人確認 — [[認証と認可]] を土台に、[[多要素認証]] でパスワードだけに頼らない
  • 端末の健全性チェック — OSが最新か、資産管理された端末かを確認する
  • [[最小権限の原則]] — 必要な範囲だけを、必要な期間だけ許可する
  • マイクロセグメンテーション — ネットワークを細かく区切り、横移動を封じる
  • 継続的な監視とログ — 誰が何にアクセスしたかを記録し、異常を検知する

アクセス判断は、これらの情報をまとめて評価する仕組み(ポリシーエンジン)が担います。「いつもと違う国からのアクセスなら追加認証を求める」といった動的な判断が典型例です。

VPNとの関係

「ゼロトラストにすると [[VPN]] が不要になる」と語られることがあります。正確には、VPN で社内ネットワーク全体につなぐ方式が見直され、アプリケーション単位で認可する方式に置き換わっていく、という話です。

VPN 接続で社内LANに入れてしまうと、そこから先は境界防御と同じ課題を抱えます。ゼロトラストでは「このユーザーはこのアプリだけ使える」と絞ります。

初学者向けポイント

  • ゼロトラストは製品を1つ買えば完成するものではなく、段階的に近づける方針です。まず多要素認証から、という進め方が現実的です
  • 「信頼しない」は人を疑うという意味ではなく、場所やネットワークを信頼の根拠にしないという意味です
  • [[OAuth・OIDC]] のような標準的な認可の仕組みは、アプリ単位でアクセスを制御する土台になります

関連技術とのつながり

  • [[認証と認可]] — 誰であるかと、何を許すかを分けて考える土台
  • [[多要素認証]] — 本人確認を強くする最初の一歩
  • [[最小権限の原則]] — 許可する範囲を必要最小限に絞る
  • [[VPN]] — 境界型リモートアクセス。ゼロトラストでは役割が見直される
  • [[OAuth・OIDC]] — アプリ単位の認可を標準的に実現する仕組み
Q: ゼロトラストの基本原則を表しているのはどれ?
- [ ] 社内ネットワークの内側は安全とみなす
- [x] 決して信頼せず、アクセスのたびに検証する
- [ ] 認証は初回ログイン時にだけ行う
解説: ゼロトラストは場所を信頼の根拠にせず、アクセスのたびに検証することを原則とします。

Q: 境界防御モデルの弱点として説明されているのはどれ?
- [x] いったん内部に侵入されると横移動を許しやすい
- [ ] 社外からのアクセスを一切遮断できない
- [ ] パスワードを保存できない
解説: 内側を信頼する前提のため、侵入後に内部を自由に移動されるリスクがあります。

Q: ゼロトラストの構成要素として本文で挙げられていないのはどれ?
- [ ] 多要素認証による強い本人確認
- [ ] ネットワークを細かく区切るマイクロセグメンテーション
- [x] すべての通信を平文に戻して保存すること
解説: 挙げられていたのは本人確認・端末チェック・最小権限・マイクロセグメンテーション・継続的な監視です。